家族を描いた小説には、誰にでも共通する感情が詰まっています。
愛情、すれ違い、別れ、再生…。そうしたテーマを通して、読み手の心にそっと寄り添う物語たち。
今回は、泣けるけれど読後には不思議と前向きになれる家族小説を5冊ご紹介します。
・最近、涙を流していない
・家族との距離感に悩んでいる
・疲れていて、でも優しい物語が読みたい
📘 1. 『とんび』重松清
妻を事故で亡くし、男手一つで息子を育てる父・ヤス。
酒癖が悪く、口も悪いけれど、彼の行動にはいつも不器用な愛があります。
成長する息子と父親のすれ違い、そして理解。
やがて息子が親になったときにようやく見えてくる父の背中。
「親とは何か」「家族とはどうあるべきか」を深く考えさせられる一冊です。
📘 2. 『西の魔女が死んだ』梨木香歩
中学で不登校になったまいが、祖母の家で過ごす日々。
田舎の庭、手作りの食事、ハーブの香り。
自然と暮らしがゆっくりと彼女を癒していきます。
祖母との静かな会話のひとつひとつに、生きる力が込められていて、読んでいるだけで心が落ち着きます。
祖母の死を通してまいが得たものとは…深い余韻が残ります。
📘 3. 『明日の子供たち』有川ひろ
舞台は児童養護施設。血のつながりはなくても、人と人とのつながりが“家族”になることを描いた物語です。
子どもたちの背景は決して明るいものばかりではありません。
けれど、支えようとする職員たちの姿、子どもたちの心の成長が描かれた本作には、泣き所がたくさん。
重いテーマですが、最後にはしっかりと心に火を灯してくれる作品です。
📘 4. 『博士の愛した数式』小川洋子
交通事故によって80分しか記憶を保てなくなった数学者・博士。
彼の世話をする家政婦とその10歳の息子。
この3人の関係は、最初こそよそよそしいものの、日々の会話や数学・野球への興味を通じて、穏やかに深まっていきます。
「記憶」は失われても、「やさしさ」や「温かさ」は確かに残る——そんな博士の在り方に、涙があふれます。
📘 5. 『ライオンのおやつ』小川糸
舞台は瀬戸内の小さな島。
余命わずかとなった主人公・雫は、ホスピス「ライオンの家」で暮らすことを選びます。
ここでは、患者が「人生で一番おいしかったおやつ」をリクエストできる時間があり、雫もまた、自らの思い出に向き合っていきます。
家族との過去、自分の人生の意味、そして「生ききる」ことの重み。
死を描きながらも、ここまで前向きであたたかい読後感を与えてくれる作品は稀です。
今回ご紹介した5冊は、どれも「涙」だけで終わらず、その先に「希望」や「再生」が待っている物語です。
家族だからこそ難しい、けれど家族だからこそ愛おしい——そんな想いに気づかせてくれます。
読んで泣いて、でもふっと前を向ける。
そんな読書体験を、ぜひ手に取ってみてください。
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