はじめに
映画化やドラマ化された作品の原作と聞くと、「映像化されるほど注目された名作なんだ」と、つい手に取りたくなってしまいますよね。
私自身もそうなのですが、勤務している図書館で「原作本」をテーマに展示をしたところ、普段よりも貸出数が大きく伸びました。やはり多くの方が「映像化された原作なら面白いに違いない」と感じているようです。
そこで今回は、数々の作品が映像化されている東野圭吾さんの小説から、特におすすめの映画原作ミステリー5作を厳選してご紹介します。原作ならではの緻密な伏線や、映像では描ききれなかった心情描写を楽しめるはずです。
『容疑者Xの献身』(2008年公開/主演:福山雅治、堤真一、柴咲コウ)
あらすじ
天才数学者の石神は、隣人の女性とその娘が思わず手にかけてしまった殺人事件を隠ぺいするため、天才的な頭脳を駆使して“完全犯罪”を計画する。
事件を追うのは、ガリレオこと天才物理学者・湯川。
やがて明かされる「献身」の意味――その真実に触れたとき、胸を締めつけられるような切なさが待っています。
映画の見どころ
石神を演じる堤真一の存在感と圧倒的な演技力は必見。
湯川を演じる福山雅治との天才同士の静かな対決、そしてエンディングで訪れる衝撃と余韻は、観終えたあとも心に深く残ります。
原作の見どころ
原作小説では、数学者・石神の思考回路が、まるで緻密な数式のように無駄なく構築されています。
そして彼なりの「愛」のかたちに気づいたとき、胸が張り裂けそうになるはず。
映画で涙した方こそ、原作でしか描かれない石神の内面を味わってみてほしい一冊です。
『白夜行』(2010年公開/主演:堀北真希、高良健吾)
あらすじ
大阪の廃ビルで、質屋の男性が殺害される事件が起こった。
容疑者は直後に自殺し、事件は迷宮入りしたかに見えた…。
残されたのは「被害者の子」桐原亮司と、「容疑者の子」西本雪穂。
やがて成長した二人の周囲で、次々と不可解な事件が起こっていく。
――まるで、過去の影が彼らを追いかけるかのように。
映画の見どころ
決して明けることのない薄暗い現実を歩き続ける雪穂と亮司を演じた、主演の二人の演技が圧巻。
静かな緊張感をはらんだ展開と、衝撃のラストの迫力は、映像ならではの魅力です。
原作の見どころ
最大の特徴は、雪穂と亮司の視点で物語が語られないこと。
すべて周囲の人物の目線から描かれるにもかかわらず、二人の心の闇がありありと浮かび上がってくる――その描写の恐ろしさに震えます。
読み終えた後、ずしりと胸に残る重さは、小説だからこそ体験できるもの。
『祈りの幕が下りる時』(2018年公開/主演:阿部寛)
あらすじ
東京都葛飾区小菅のアパートで、女性の絞殺死体が発見された。
被害者の名は押谷道子。捜査が進む中で、加賀恭一郎は失踪した母が事件と繋がっていることを知る。
やがて事件の真相とともに、加賀が抱え続けてきた「最大の謎」が解き明かされていく――。
映画の見どころ
阿部寛演じる加賀恭一郎が、正面から過去と向き合う姿が胸に迫ります。
クライマックスで明かされる家族の真実は、観客の涙を誘った名シーン。
母としての想いも重なり、深い余韻を残す映像化となっています。
原作の見どころ
「加賀恭一郎シリーズ」完結となる本作は、まさに集大成。
事件を追うミステリーとしての緊張感はもちろん、人間の心の奥底にある愛と哀しみを描き切った傑作です。
加賀の最大の謎が明かされるとき、読者はシリーズを通して彼が歩んできたすべてを思い出し、特別な読後感を味わうことができます。
『マスカレード・ホテル』(2019年公開/主演:木村拓哉、長澤まさみ)
あらすじ
東京都内で連続殺人事件が発生。
次の犯行現場として捜査線上に浮かび上がったのは――一流ホテル「コルテシア東京」だった。
刑事・新田浩介はホテルマンに扮し、潜入捜査を開始する。
だが、次々と現れる宿泊客はクセ者ぞろい。
果たして新田は、犯人を見つけ出せるのか――。
映画の見どころ
刑事・新田を演じる木村拓哉と、教育係のホテルマン・山岸を演じる長澤まさみ。
正反対の立場からぶつかり合い、時にコミカルに繰り広げられるやりとりが心地よいテンポを生み出します。
また、華やかなホテルを舞台に、個性豊かな宿泊客を演じる豪華俳優陣の存在感も圧巻。
ラグジュアリーな空間に漂う緊迫感と、推理劇のスリルが融合した、まさに映画ならではの楽しみが詰まっています。
原作の見どころ
刑事としての使命感と、ホテルマンとしての接客精神。
相反する価値観を抱えながら衝突する新田と山岸ですが、やがて互いを認め合い、信頼関係を築いていく姿に胸を打たれます。
さらに、物語の随所に張り巡らされた伏線が、クライマックスで見事に収束する構成力は圧巻。
「エンタメ性」と「人間ドラマ」を両立させた、東野圭吾ならではの完成度の高さを堪能できます。
『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(2017年公開/主演:山田涼介、西田敏行)
あらすじ
ある夜、三人の若者が犯罪を犯して逃走中に、廃屋となった「ナミヤ雑貨店」に身を隠します。
すると突然、手紙が差し込まれます。それは不思議なことに、過去からの人生相談の手紙のようでした。三人の若者は、かつて店主がそうしていたように、差出人の悩みに答えていくことに…。
過去と現在の交流を描く、ファンタジー要素を含んだミステリー作品。
映画の見どころ
主人公である少年を演じた山田涼介や、重要人物・西田敏行の演技が胸に響きます。
ぬくもりある雑貨店で、手紙を通じて人々と交流する姿は、映像化ならではの魅力。
クライマックスで訪れる「奇蹟」の瞬間は感動的で、自然と涙があふれます。
原作の見どころ
小さな悩み相談が積み重なり、人々の心を救済していく壮大な物語へと繋がる構成は見事。
時空を超えた心温まるストーリーと、心に寄り添う優しいメッセージが印象的です。
ミステリーとファンタジー、人間ドラマが見事に融合した感動作です。
まとめ
映像と小説、どちらか一つだけでも十分楽しめますが、二つをセットで味わうと、作品の奥行きがぐっと広がります。
登場人物の心理描写や、映画では描き切れなかった細かなシーンを、原作を読むことで新たに発見できるはずです。
皆さんのお気に入りはどの作品ですか?
私はミステリーはもちろん、ファンタジーも大好きなので、『ナミヤ雑貨店の奇蹟』が東野圭吾作品の中でイチ推しです。
あなたの推し作品も、ぜひコメントで教えてくださいね✨
コメント