図書館司書が選ぶ!本当に面白いおすすめ小説5選【読書初心者にもぴったり】

おすすめ○○選

  1. 図書館司書が選ぶ“本当に面白い”本5選|隠れた名作から定番まで
    1.  ①『そして、バトンは渡された』瀬尾まいこ(文藝春秋)
      1. 家族の多様性と「受け継ぐ愛」
      2. 現代社会に響く、家族のあり方
      3. あたたかな日常とリアルな感情描写
      4. シンプルで優しい文章と深いテーマ
      5. 多彩なキャラクターと成長物語
      6.  2019年本屋大賞受賞&映画化も話題に
      7. こんな人におすすめ!
    2.  ②『そして誰もいなくなった』アガサ・クリスティー(クリスティー文庫)
      1. 究極のクローズド・サークル
      2.  探偵不在の群像劇と心理サスペンス
      3. 見立て殺人と巧妙なトリック
      4. 社会的テーマ性と道徳的問い
      5. 現代ミステリーへの計り知れない影響
      6. こんな人におすすめ!
    3. ③『夜市』恒川光太郎(角川ホラー文庫)
      1. 唯一無二の幻想世界と、不気味な「夜市」
      2. 淡くも恐ろしい人間ドラマ
      3. 世界設定と伏線の巧みさ
      4. 日本ホラー小説大賞受賞のデビュー作
      5.  詩的で美しく、淡々とした文体
      6. こんな人におすすめ
    4.  ④『罪の声』塩田武士(講談社文庫)
      1. 圧倒的リアリティと社会的背景
      2. 幼い“声”が引き金となる運命
      3. 重厚な人間ドラマと深いテーマ性
      4. サスペンスと謎解きの醍醐味
      5. フィクションと現実の境界を楽しめる
      6. 数々の受賞歴と高評価
      7. こんな人におすすめ!
    5. ⑤『ハケンアニメ!』辻村深月(マガジンハウス)
      1.  アニメ制作の裏側をリアルに描く
      2.  共感できる“働く人たち”のドラマ
      3. 多視点構成で立体的に物語が展開
      4.  “覇権”とは何か? 創作の本質に迫る
      5. 読みやすさと爽快な読後感
      6. アニメや“ものづくり”が好きな人への応援歌
      7. こんな人におすすめ!
    6.  まとめ|“面白い”のカタチは一つじゃない

図書館司書が選ぶ“本当に面白い”本5選|隠れた名作から定番まで

こんにちは、図書館司書のひらぱです。

日々本に囲まれて働いていると、利用者さんや友人から「面白い本ない?」とよく聞かれます。

今回は、そんな質問に自信を持っておすすめしたい“本当に面白い”5冊を、ジャンルを問わずご紹介します。読書から少し離れていた方にもおすすめできるラインナップです!


 ①『そして、バトンは渡された』瀬尾まいこ(文藝春秋)

血のつながらない親たちに育てられた少女・優子の成長を描く、優しさと温かさに満ちた物語2019年本屋大賞受賞作。
  • 複数の親に育てられるという設定が斬新
  • 心がふんわりする読後感
  • 「家族とは何か」を考えさせられる

家族のかたちはひとつじゃない。
そんな当たり前のことを、優しく伝えてくれる一冊です。

家族の多様性と「受け継ぐ愛」

この小説の最大の魅力は、血のつながりにとらわれずに受け継がれていく“家族の愛”を描いている点です。
主人公・森宮優子は、何度も親が変わり、血の繋がらない親たちの間を「バトン」のように引き継がれながら育っていきます。

「困った、全然不幸ではないのだ」──
印象的な書き出しが、物語の温度を物語っています。

現代社会に響く、家族のあり方

多様な家族の形が当たり前となりつつある今の社会で、「家族とはなにか?」を静かに問いかけてくれる本作。
血のつながりがなくても、深く、やさしい絆は育まれる。違う大人たちが、それぞれ違った形で優子を支えていく姿が、読む人の心をじんわり温めてくれます。

あたたかな日常とリアルな感情描写

日常の何気ないシーンにこそ、大切なものが詰まっている。

大げさな感動ではなく、ささやかな幸せの積み重ねを丁寧に描いているのが瀬尾作品の魅力。
「元気でも塞いでいても、ごはんを作ってくれる人がいる」ことのありがたさなど、読み終えたあとに思わず「ありがとう」と言いたくなるエピソードがちりばめられています。

シンプルで優しい文章と深いテーマ

瀬尾まいこの文体は、やさしく、シンプル。難しい言葉は使わず、誰にでもすっと届く文章です。
読書に慣れていない人でも無理なく読めて、それでいて心に静かに残る──そんな味わいがあります。

多彩なキャラクターと成長物語

主人公・優子の人生に関わる親たちは、なんと5人。
実の母や父だけでなく、継父・森宮さん継母・梨花さんといった登場人物もそれぞれ個性豊かで、それぞれが自分なりの愛を注いでくれます。
そのひとりひとりの関わりが、作品全体に深みと温かさをもたらしています。

 2019年本屋大賞受賞&映画化も話題に

📖 本屋大賞1位(2019年)
🎬 映画化(主演:永野芽郁)で話題に

読者からの共感の声も多く、映画版では映像を通してこの優しい物語に触れることができるようになりました。
でも、やはり原作でしか味わえない“空気感”があります。

こんな人におすすめ!

  • 家族の物語が好きな人
  • 心あたたまる小説が読みたい人
  • 感動する話を探している人
  • 読書初心者でも読みやすい作品を探している人
読後にはきっと、今そばにいる“家族”“身近な人”
「ちょっとやさしくなりたい」と思える一冊です。

 ②『そして誰もいなくなった』アガサ・クリスティー(クリスティー文庫)

アガサ・クリスティの代表作にして、世界で最も売れたミステリー小説──
それが『そして誰もいなくなった』です。

この作品には、他のミステリー作品にはない独自性完成度の高さが詰まっています。読めば誰もがその緊張感に引き込まれ、衝撃のラストに息を呑むことでしょう。

究極のクローズド・サークル

逃げ場のない孤島で、容疑と恐怖が極限に達する

物語の舞台は絶海の孤島。外部との通信も脱出手段も断たれた“密室”の中、集められた10人が一人、また一人と消えていきます。

  • 疑念が深まる
  • 誰も信じられない
  • 読者もその場にいるような臨場感

“密室”という言葉では足りないほどの緊張感が、物語全謎を支えています。

 探偵不在の群像劇と心理サスペンス

誰もが被害者であり、容疑者でもある

本作には探偵役が存在しません。
読者は、集められた10人の登場人物の中に犯人がいるという状況で、全員の心理に目を凝らすことになります。

  • 誰もが疑わしい
  • しかし共感もしてしまう
  • 不信と恐怖がリアルに伝わる

この群像劇形式と心理描写の巧みさが、読者の没入感を極限まで高めます。

見立て殺人と巧妙なトリック

「童謡」が殺人の予告になる恐怖

殺人はすべて、「十人の兵隊さん」という童謡に沿って行われます。
次に誰が、どうやって死ぬのか──その“順番”がわかっているからこそ、恐怖は倍増します。

さらに驚くべきは、

登場人物が全員死ぬという衝撃のラスト。

そして最後に明かされるのは、
「誰が」「どうやって」この完璧な犯罪を成し遂げたのかという謎。

その答えは、想像をはるかに超えています。


社会的テーマ性と道徳的問い

裁けぬ罪と、正義の名を借りた裁き

この物語の登場人物は、皆「法で裁かれなかった罪」を抱えています。
本作のテーマにはこんな問いが込められています。

本当の正義とは何か?
罪を裁くのは誰か?

ただの娯楽ミステリーでは終わらず、読者に倫理や人間性の本質を問う深みがある点も、長く愛される理由のひとつです。


現代ミステリーへの計り知れない影響

すべての“孤島ミステリー”はここから始まった

『そして誰もいなくなった』は、発表から80年以上が経った現在も、世界中のミステリー作家に影響を与え続けています

  • 孤島 × 密室 × 見立て殺人
  • 全員が容疑者という構成
  • 探偵不在の集団劇

こうした要素は、日本のミステリーにも数多くオマージュされています。
まさに現代ミステリーの雛形であり、古典にして新しい1冊です。


こんな人におすすめ!

  • 本格ミステリーが好きな人
  • 緊張感のある物語に没入したい人
  • 人間ドラマ心理描写に惹かれる人
  • アガサ・クリスティ作品を初めて読む人

③『夜市』恒川光太郎(角川ホラー文庫)

200ページほどで読めるのに、圧倒的な異世界体験。幻想文学としても高く評価されています。
  • 夜市という不思議な世界観に引き込まれる
  • 幻想と現実のあわいが美しい
  • 「怖いのに心地よい」という不思議な読後感

短時間で読めるので、読書リハビリにもぴったりな一冊。

唯一無二の幻想世界と、不気味な「夜市」

夜の森に忽然と現れる異界の市場「夜市」。そこでは、人魂が浮かび、妖怪や異形の者たちが不思議な商品を売りさばいています。
見たこともない光景、幽玄な雰囲気、現実と幻想のあわいにある世界観が読者の想像力を刺激します。

懐かしさと不安、恐怖と魅力が共存する、
“夜の夢”のような読書体験。

淡くも恐ろしい人間ドラマ

物語の主人公・裕司は、かつて「野球の才能」と引き換えに弟を夜市に売ったという過去を背負っています。
その贖罪のために再び夜市を訪れる彼の姿に、欲望・罪・愛・赦しといったテーマが繊細に絡み合い、ただのホラーやファンタジーにとどまらない人間ドラマの深みが生まれています。

幻想的でありながら、
人間の弱さ切なさ真正面から向き合う物語。

世界設定と伏線の巧みさ

「夜市で何かを買わなければ出られない」など、独自のルールやしきたりが物語にリアリティをもたらします。
登場人物の持ち物や、会話の端々にも伏線が仕込まれており、読者は細部にまで目を配りながら読み進めることになります。

そして終盤、その伏線が美しく回収されていく時、物語は恐怖を超えた感動と余韻へと変わります。

日本ホラー小説大賞受賞のデビュー作

📖 第12回日本ホラー小説大賞受賞作
🎖 直木賞候補にも選出された注目のデビュー作

恒川光太郎のデビュー作である本作は、幻想文学とホラーの境界線を越えた新しい文学体験を提供します。
読後には切なさと美しさが同居するノスタルジックな余韻が心に残ります。

 詩的で美しく、淡々とした文体

恒川氏の文章は、澄んだ水のような静けさを持ちながら、読む者の心の奥底をそっと撫でるような力があります。
派手な描写や難解な言葉は使わず、子ども時代の記憶を呼び起こすような懐かしさを感じさせてくれます。

こんな人におすすめ

  • 幻想的な物語異世界系が好きな人
  • 切なさ・贖罪・家族愛がテーマの作品に惹かれる人
  • 伏線のある短編を読みたい人
  • “読後に余韻が残る小説”を探している人

 ④『罪の声』塩田武士(講談社文庫)

実在の事件を下敷きにした重厚な社会派ミステリ。フィクションなのに、あまりにもリアル。
  • 1980年代の未解決事件がテーマ
  • 記者と元被害者という2人の主人公
  • メディア・正義・個人の尊厳が交錯する

長編ですが、テンポよく読める構成で、社会派小説入門にもおすすめ。

圧倒的リアリティと社会的背景

本作のモチーフは、1980年代に実際に起きた「グリコ・森永事件」
事件当時の社会の空気感や報道の過熱、記録媒体の描写など、あらゆるディテールが緻密に再現され、読むだけで時代の息づかいを感じられるほどの臨場感があります。

ノンフィクションのような質感と小説としての構成力が見事に融合しており、「これは本当にフィクションなのか?」と読者に問いかけるような迫力があります。

幼い“声”が引き金となる運命

ある日、主人公は幼少期の“自分の声”が、未解決事件脅迫テープに使われていたことを知る──。

主人公の一人・曽根俊也は、父の営んでいたテーラーを継ぐ青年。
ある日見つけたカセットテープに録音されていた声が、自分の幼少期のものだと気づいた瞬間から、彼の人生は大きく揺らぎ始めます。

もう一人の主人公・新聞記者の阿久津英士とともに、物語は「過去の罪」と「家族の運命」へと深く切り込んでいきます。

重厚な人間ドラマと深いテーマ性

本作の核心は、「罪」とどう向き合うかという人間の本質的なテーマ。
単に事件の真相を追うだけでなく、被害者・加害者双方の家族に焦点を当て、逃れられない過去と共に生きる人々のドラマが丁寧に描かれています。

サスペンスだけで終わらせない。
人間の“業”と“再生”に静かに迫る、深みのある物語。

サスペンスと謎解きの醍醐味

2人の主人公がそれぞれの立場で事件の核心に迫っていく過程は、極めてスリリング
真犯人の動機、証拠の謎、関係者の心理……
丁寧に積み重ねられた描写が、物語の深さと読み応えを生み出します。

読者は彼らと共に真相へ少しずつ近づいていく緊張感を味わいながら、真実と向き合うことになります。

フィクションと現実の境界を楽しめる

実在の事件にインスパイアされつつも、本作は明確にフィクションとして再構築された世界
現実と虚構の境目をあえてぼかしながら描かれることで、読者は「これは自分の物語かもしれない」というリアルな没入感を得られます。

数々の受賞歴と高評価

  • 第7回 山田風太郎賞 受賞
  • 「週刊文春」ミステリーベスト10 第1位
  • 映画化(主演:小栗旬、星野源)で話題に

社会的な注目度も非常に高く、多くの読者から「読後しばらく立ち上がれなかった」という声が上がるほどの衝撃と感動を呼びました。

こんな人におすすめ!

  • 実在の事件をもとにした小説が好き
  • 人間ドラマ×サスペンスを味わいたい
  • 家族過去と向き合うテーマに興味がある
  • 映画版を観て原作にも触れてみたい

⑤『ハケンアニメ!』辻村深月(マガジンハウス)

アニメ業界で働く人々葛藤情熱を描く、熱くて爽やかなお仕事小説映画化も話題になりました。
  • アニメ業界の裏側が垣間見える
  • 仕事に悩む大人に刺さる展開
  • 夢と現実に向き合う主人公たちが魅力的

「プロとは何か?」「仕事に情熱を注ぐとは?」
働くすべての人に読んでほしい物語。

 アニメ制作の裏側をリアルに描く

『ハケンアニメ!』最大の魅力は、アニメ業界の舞台裏をリアルかつエンタメ性たっぷりに描いている点です。
プロデューサー、監督、声優、制作スタッフ…それぞれの役割や立場が緻密に描かれ、1本のアニメが生まれるまでの苦労と熱気がひしひしと伝わってきます。

「ハケン(覇権)」を目指す戦いの中で、
誰もが自分の信念と向き合う姿が熱い!

 共感できる“働く人たち”のドラマ

主人公・斎藤瞳(若手プロデューサー)をはじめとする登場人物たちは、「好き」を仕事にする難しさと、理想と現実のギャップに揺れながらも、本気でアニメ制作に挑んでいます。
仕事に悩んだり、何かを本気でやり遂げたい人には、強く共感できる登場人物たちばかりです。

「自分も何かに打ち込んでみたい」──
そんな前向きな気持ちになれる読後感。

多視点構成で立体的に物語が展開

本作では、各章ごとに語り手が変わる多視点構成がとられています。
同じ現場、同じ出来事でも、立場が違えば見える景色も感情も違う。それがリアルであり、人間味あふれるドラマになっています。

主人公同士の“ライバル関係”や“世代間の葛藤”も丁寧に描かれ、視点が変わることで物語の深みがぐっと増します。

 “覇権”とは何か? 創作の本質に迫る

タイトルにある「ハケン(覇権)」とは、アニメ業界で“そのクールでもっとも人気を集めた作品”のこと。
でもこの作品は、単なる数字や人気争いではなく、「誰かの人生を変える作品を作る」ことの意味を丁寧に描いています。

作品が誰かの心に届くこと。
それこそが“本当の覇権”なのかもしれません。

読みやすさと爽快な読後感

テーマは本格的でも、文章はとても読みやすくテンポも軽快
専門用語が出てきても文脈で理解でき、読書初心者にもおすすめです。

敵・味方といった枠を超えて、登場人物みんなにエールを送りたくなるような構成と結末。爽やかな読後感も本作の大きな魅力です。

アニメや“ものづくり”が好きな人への応援歌

『ハケンアニメ!』は、アニメファンだけでなく、「何かを創ること」に情熱を注ぐ人にこそ読んでほしい物語です。
創作の喜び、苦しみ、葛藤、達成感──あらゆる感情が詰まった本作は、すべての“つくる人”の背中を押してくれる応援歌です。

こんな人におすすめ!

  • アニメ制作の裏側に興味がある人
  • 仕事に悩んでいる人、頑張りたい
  • 創作活動チームワークに関心がある人
  • 読みやすくて前向きになれる本を探している人
  • 何かに本気で取り組んだ青春を思い出したい人

 まとめ|“面白い”のカタチは一つじゃない

今回は、図書館司書である私が本当に面白いと思った5冊をご紹介しました。

物語の世界に没入したり、自分自身を振り返ったり——。

本との出会いは、きっと今のあなたに必要な何かをもたらしてくれるはずです。

気になる本があれば、ぜひ図書館の棚をのぞいてみてくださいね。きっとそこにも素敵な出会いが待っています。

コメント

タイトルとURLをコピーしました